小さい頃よく生き物を飼った。

 ザリガニ、カブトムシ、小鳥、猫、犬、ウサギ・・・。

 昆虫類を抜かしては全てオヤジが勝手に何処かの露天で買ってきては
自宅へ投げ捨てていく。
 3ヶ月に一度しか戻らないオヤジはいつの間にか自分が飼ってきた事も忘れてしまう。

 困るのはいつもオカンだ。
はじめはオイラ達きょうだいは喜んで遊んだりしているのだが、いつの間にかその飼育に飽きてしまう。
 飼育係は決まってオカン。

 そして何よりオカンは生き物全てが嫌い^^;

 我が家では、ペットがやってくると名前の命名権はオカンにあった。
そして唯一犬の“ジュン”を除いてだが、必ず“チッチ”と名付けた。

 ザリガニ、カブトムシ、ウサギ、カラーひよこ、金魚に至るまで全てチッチと名付けたオカン。

 「チッチに餌やっておいて〜」
 「チッチの水入れ替えて〜」
等と言うが、どれがどのチッチを指しているのか分からない^^;

 話は変わるが、うちのオカンは子供であろうと先生であろうと、
誰がどんな事情を持っていても構わない性格だ。

 オイラが小学校1年生のとき、授業中にオカンからの緊急の電話だと
職員室に呼び出された。
 オカンはものすごい慌て様で、幼心にもただ事ならぬ雰囲気を感じ取りオカンの言うとおり、そのまま自宅へ帰った。

 自宅に帰るとオカンは「チッチがぁ!チッチがぁ!」
とおののいている。
 ん?ウサギはいるし、金魚も今の所は何もないようだが・・・??

 腰を抜かしかけたオカンの指差した先には、一つの箱があった。

 確かに見覚えがある。

カマキリの卵を入れておいた箱だ。

 「カサカサっ、ゴソゴソっ」

箱の中にうごめく気配が・・・。孵化が始まっていたようだ。

 ご存知の方もおられると思うが、カマキリの卵は1匹2匹の単位で孵化するわけではない。
 それこそ100〜200匹単位で(実際にはそれ以上にいる)孵化する。

 箱を開けると大量の子カマキリが所狭しと駆け回っている。

 オカンはノックアウト寸前だった。

「オカン、チッチが大量に生まれたみたい」

 オカンは怒涛のごとく怒り狂い
「そんなにチッチばっかりどうするの、捨ててきなさい!!」
と怒鳴りつけられた。

 オイラにしてみても、100や200の単位のカマキリを全てチッチで名付けられてもかなわないと思い泣く泣く公園に解き放った。

 それからというもの、やれザリガニが共食いを始めたとか、おたまじゃくしの足が気持ち悪いと言っては、授業中にも拘らず、帰宅を余儀なくされた。

 オカンは飼育の担当ではあったが、結局は殆ど強制的にオイラが世話をさせられた。

 
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